ゴカイのヘモグロビンが人類を救う?人工血液・代替血液の未来

フランスの研究チームにより、ゴカイのヘモグロビンはヒトのヘモグロビンの40倍もの酸素運搬能力があることがわかりました。
潮の影響を激しく受ける環境で生きてきたゴカイですから、過酷な環境下でそのような能力を身に着けたのでしょう。
ヘモグロビンの成分もほとんどヒトと同じで、すでにヒトの腎移植の際に臨床実験が行われているそうです。

なぜ人の代替血液がゴカイなのか

ゴカイ 代替血液

ゴカイといえば釣り餌でおなじみの海の生物です。

ゴカイは海中でのみ呼吸し、空中では呼吸しないで生きられるスゴイ生き物。

どうして呼吸せずに生きられるのか?

その理由が、ゴカイの血液中に含まれる豊富な酸素量にあります。

海中で取り込んだ酸素をたくさん血液中にためておけるから、呼吸せずに長時間生存できるのです。

8時間以上生きられるというからすごいですね!

この空中で呼吸せずにいられることからゴカイの代替血液の研究は始まったとされています。

ゴカイの血液の酸素運搬量は、ニンゲンの40倍ともいわれているのです。

血液中で酸素を運搬するのはヘモグロビンの仕事です。

ゴカイのヘモグロビンはヒトのように赤血球の中に含まれるのではなく、血中に溶け込んでいるのだとか。

これは血液型の違いを気にせずに使えるということになりますね。

皮膚移植では移植した組織に血の気が戻るまで時間がかかるそうなのですが、移植組織の保存液にゴカイのヘモグロビン液を加えることで保存状態が改善し、すぐに皮膚がピンク色になったんだとか!

移植医療に革命を起こすともいわれ、腎臓など移植臓器の保存状態の改善に効果が期待できそうだということです。

こういった先進医療の実用化には、研究→非臨床試験→臨床試験→実用化というステップをふむのが一般的ですが、ゴカイのヘモグロビン液は臨床試験でいい結果を残しているそうです。

代替血液のためにゴカイを養殖

以前は日本国内でもゴカイの養殖場はいくつもありましがた、疑似餌の進化や輸入されたイソメなどの人気で今では下火になってしまっています。

釣り餌としてのゴカイはそんな感じですが、代替血液のためのゴカイはまたちょっと違うようです。

現在、研究者とバイオ技術企業とが協力して養魚場で100万匹以上のゴカイを大きなプールで養殖しています。

釣り餌のゴカイは卵から半年くらいで出荷できるようですが、代替血液用となるとどうなのでしょうか?

ちなみにイソゴカイの養殖の場合、イソゴカイが好むのはウナギ養殖用のウナギフードや魚粉など。

アジよりはイワシ派。

ゴカイは魚の餌になりますが、魚もゴカイの餌になるようです。

海藻類はあんまり好きじゃないみたい。

肉食系なんですね!

釣り人はゴカイ飼育上級者?

ゴカイ,代用血液

釣りをする人の中には、エサとなるゴカイを自分で飼う人もいるようです。

必要な装備は、一般的な海水魚を飼育するのと同じような感じ。

  • 水槽
  • フィルター(ポンプ)
  • マリンソルト

魚と同様、水ができてからゴカイを投入しましょう!

ちなみに、自分で砂浜で掘ってきた砂と汲んだ海水だと傷みやすくてゴカイが弱りやすいんだとか。

ゴカイはアオイソメと比較すると高価なので自分で飼っちゃう!という合理的?な考え方ですが、企業が本気を出して養殖するのは難しくなさそうです。

ゴカイから完全な代替血液ができる?

人工血液の研究は1960年代から続けられています。

血液のいちばん大事な任務って何でしょう?

おそらく酸素を運搬することでしょう。

この酸素を運搬するのが赤血球。

もうひとつ、血液を凝固させる血小板との二つが人工血液の課題です。

赤血球のヘモグロビンから分離させた酸素を、人工血液に持たせるのが難しいそうです。

ゴカイのヘモグロビンは赤血球ではなく血中に溶けていて、しかも酸素運搬能力がすごい。

試験を重ねて安全で有効だということが証明できれば、移植用臓器の保存からゆくゆくは輸血用血液の代用まで、万能血液としてたくさんの人々が救われるようになるかもしれません。

ゴカイから代替血液が作られた場合、輸血を禁じている宗教団体はどのように扱うのかちょっと興味があります。

カブトガニの血液工場

カブトガニの血液工場をご存知でしょうか。

カブトガニのヘモグロビンには鉄ではなく銅が含まれるため、赤ではなく青い色をしており、細菌汚染に対して早く激しく反応するので、細菌汚染試験に大いに貢献しているとのこと。

アメリカの東海岸にはカブトガニの血液工場があり、捕ってきたカブトガニから青い血液を採取してまた海に返す、ということを繰り返しているのです。

カブトガニから採血するのは全量の30パーセントほどの血液で、またすぐ捕獲しないように返すときには遠く離れた場所へ返すとか。

それでもやはり10~30パーセントのカブトガニが弱って死んでしまい、雌のカブトガニには繁殖への影響も出ているそうです。

ちなみに検索すればこのカブトガニ血液工場の様子が見られますが、かなり残酷なことをしているようにみえてしまいます。

カブトガニ
釣り餌としてくらいの付き合いしかなかったゴカイですが、すごい能力を秘めていることがわかりました。
医療の進化は喜ばしいことですが、動物の犠牲について忘れたくはないですね。
たとえそれが虫でも!

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