オーストラリアのジョイス副首相が、オーストラリア国内で繁殖している外来種の鯉について、「底辺に住み着いて泥を吸うムカつく生きもの」と形容しました。
コイだけに感染して死に至らしめるコイヘルペスウィルスをばらまくとか。
コイ以外の生物に影響を与えないことは確認済み、とのことですが、ほんとに大丈夫?
オーストラリアのコイ事情
何故オーストラリア政府が激おこなのかというと、「世界の侵略的外来生物100」にも選定されている外来生物であるコイが川に住み着いてしまったせいで、オーストラリア固有の生物がいくつか絶滅してしまったというから大変です。
そりゃ激おこにもなりますが、コイヘルペスは本当に他の生物に影響を与えないのか。
オーストラリア国内の大学が実験研究しています。
コイヘルペス自体は他の生物には影響しないようですが、問題はコイヘルペスで死んだコイ。
大量に死ぬと大量に腐敗し、周辺の水質を悪化させ、周辺の生物にも悪影響が出ることが実験でわかっています。
コイは肥料などに利用する、ということですが、すぐに回収しないと水質汚染は免れません。
実際にコイヘルペスをばらまいたとしたら、何万トンものコイが水に浮かぶことになりますが、どのようにクリアするんでしょうか。
オーストラリアは反捕鯨国のイメージが強いですが、コイが増えすぎたからウイルスばらまくわ!ってのはちょっと乱暴な気がします。
少し前にはコアラが増えすぎたから安楽死させるという問題でも話題になりましたが、うちのウサギアレルギーの部長は仕事中に「コアラ安楽死させるくらいなら俺欲しい」とつぶやいていましたが、ユーカリはどうすんの?コアラアレルギーだったらどうすんの?コアラなめてんの?横浜の金沢動物園ではコアラの飼育がうまくいかなくて飼育係さんが森の中で・・・と仕事そっちのけでした。
池の水を抜く場合もそうですが、外来種といっても生物はただ生きているだけで罪はなく、だからといって罪のない在来種が生きていけないのも問題なわけで、命あるものだからこそ慎重になるべきですね。
これも自然の流れ、という考え方もありますが、勝手に海を渡ってきた対馬列島のカワウソならともかく、人間の手で持ち込まれた生物については、人間が責任を持って管理するべきなのかもしれませんし、責任を持って管理するという考えが傲慢だ、というのもひとつの考えなのかもしれません。
コイにも権利を!コイ権論争@ポーランド
コイは、日本では上杉鷹山のコイ食べようぜキャンペーンや、海の遠い内陸の地域でのたんぱく源となってきました。
中国の丸ごと料理したものもおめでたそうでおいしそうですね。
ヨーロッパ、とくに中欧と東欧でもコイは食べられています。
特にクリスマスにムニエルのような料理にして食べられていて、七面鳥のような扱いのようです。
ポーランドでは魚屋さんのいけすからコイを買ってきて自宅で調理する文化のようです。
・いけすの広さ(一匹あたりの専有面積)を確保する
・魚屋から自宅までの輸送手段(十分な水の量のバケツに入れて運ぶ)
・しめるときにはコイを苦しめない
等をルールとし、守れない場合は実刑な、という公式文書を発表し、議論になりました。
アメリカの七面鳥恩赦のイベントに倣って、コイを川に放流したりしたそうです。
政治的な意味合いもあるのでしょうが、世界は広いですね。
コイは南極と北極以外どの国にもいるらしいですが、本当でしょうか?
滝を登って龍になれ!登竜門とこいのぼり
日本でももうすぐコイフェステバルの時期です。
5月5日子供の日には、日本全国で鯉のぼりが泳ぐことでしょう。
中国では滝を登り切った鯉は龍になるという言い伝えがあり、これが武士の立身出世を祈願するイベントとして武士制度がなくなった現在まで続いています。
登り切った鯉が龍になる滝は黄河にあり、浮世絵なんかに描かれている滝のような激流というよりは、静かな「狭き門」といった風情です。
コイもある程度の段差は乗り越えられるようですし、魚道なんかは遡上しているようですが、滝はちょっと難しいかもしれませんし、楽勝なら登竜門ラクショーってなもんでありがたみがないですね。
一説では、この登竜門の鯉とはキャビアで有名なチョウザメのことを指しているといいます。
コイもでかいですが、チョウザメは5mになる個体もいるので、コイよりは可能性高いかもしれません。
外来種の問題は世界共通の悩みかもしれません。ある国では絶滅危惧種の生物が、ある国では特定外来種。奇妙ですが、進化した知能を持つ生物があちこち移動する手段を手に入れたのですから、当然の結果なのかも。進化した知能を活かして解決したいところです。