池の水ぜんぶ抜く?かいぼり@井の頭公園!在来種を守れ

井の頭公園かいぼり

井の頭恩賜公園100周年イベントの流れで、第3回目となるかいぼりが始まりました。昨年末から池の水を抜く作業が始まり、現在も排水作業が続いています。2度のかいぼりを経て、外来種の駆除を行った結果、在来種の中には急激に増えたものもいるとか。井の頭公園の池の中はどうなっているのでしょうか?

かいぼり前の池の主は外来種?

かいぼりが行われる以前の池では外来種が主役といってもいいような状態でした。
ブルーギルやオオグチバス、アメリカザリガニが在来種の小魚やエビを食べてしまったのです。
池にいる魚類の大半をブルーギルが占める、という状態だったとか。
井の頭公園が目指す、水面をのぞき込めば在来種の魚の群れが見える、というような状態とはほど遠い様子です。
しかし2度のかいぼりの結果、ブルーギルやアメリカザリガニを根絶するところまでは至っていないものの、オオグチバスは確認されない状態となり、在来種の魚やエビたちが数を増やしてきています。

手強いブルーギルとアメリカザリガニ

ブルーギルはかいぼりをかいくぐって繁殖をしているようです。
かいぼりの翌年には当年魚(その年に生まれた魚)が群れで確認されました。
短期間の間にかいぼりを繰り返している状態なので、その後も成魚(大人の魚)は網にかからず、かなり少なくなっているのではないかと考えられています。
アメリカザリガニは水草や水生生物に大きな影響を与える存在ですが、かいぼりの最中も泥の中に潜って隠れてしまうので、いっぺんに捕まえることができません。
その為、水生生物のモニタリング調査とあわせて、ワナでの捕獲が続けられていますが、なかなか数が減らず、今後も継続的な捕獲を続けていくようです。

ブルーギルってそもそもどんな魚?

井の頭公園ブルーギル

ギル=えら
体長20センチくらい。
ヒレがトゲトゲで痛い。
アメリカではフライパンに収まりがいいから「パンフィッシュ」とか呼ばれて食べられるそうだが、日本ではあまり食べられていないけれど大きいのは結構おいしいらしい。
塩焼き、煮魚、ムニエル、アクアパッツァ等。
ヒレが痛いのと小骨が多いので大きいブルーギル以外は調理しにくい。
日本に来たのは1960年、アイオワ産の15匹が今上天皇に寄贈されたのが始まり。
あちこちで放流されちゃって増えた。
卵や稚魚を守る習性があるから増えやすい。
ウグイがブルーギルの卵や稚魚を食べるので繁殖抑制効果あり?
ブラックバスよりも在来種食べちゃう率が高い説あり。

増えた在来種たち

2度のかいぼりの後、急激に数を増やした在来種がいます。
モツゴ、ギンブナ、トウヨシノボリ、スジエビです。
これらがどれだけ外来種に食べられちゃってたの?という話です。

モツゴ

モツゴ

こちら(関東)ではクチボソという名前の方が有名かも。
池で釣りするときの遊び相手ですね。
宮崎、高知、愛媛、徳島、山口、滋賀、千葉の各県ではレッドリストに載っているとか。
その一方では唐揚げやてんぷらにするとおいしいらしい。

ギンブナ

「キンブナ」という絶滅危惧種もいます。
ギンブナはほとんどがメスで、無性生殖の一種の雌性発生で増える。
メスがクローンで子供を産むけれど、そのためにはオスの精子が必要で、でもメスばっかりじゃどうすんの?という話で、有性生殖の他のフナのオスの力を借りるんだって。
オスの精子はあくまで発生の刺激なので、遺伝的な意味はないんだとか。
不思議。

トウヨシノボリ

ハゼの仲間です。
トウヨシノボリの「トウ」は「橙」の字を書きます。
尾びれに橙色の斑点があるからこの名が付けられたにも関わらず、個体差が大きくて不明瞭なことも多いとか。
海に行くとも考えれられていたけれど、湖沼にもいます。
井の頭公園の池も海とは繋がっていない・・・よね?

スジエビ

スジエビ

テナガエビの仲間。
基本的に淡水で暮らすが、汽水域にいるものも。
雑食だけど肉食性が強く、メダカと混泳させるな、とアクアリストには有名。
カワエビの天ぷらとかになって居酒屋で出会うことも。
琵琶湖で発光する「ホタルエビ」騒動を巻き起こしたのは発光細菌に感染したスジエビが正体。

かつて井の頭にいた幻の魚ムサシトミヨとミヤコタナゴ

井の頭公園の池はかつて1日に1万トンの水が湧き、江戸の水源とされていました。
そこには関東固有種のムサシトミヨやミヤコタナゴの姿もありましたが、湧水量の減少で水質が悪化したり、外来種が増加したりで現在は姿を消してしまいました。
池からはいなくなってしまいましたが、井の頭自然文化園内の水族館で飼育されているようです。

ムサシトミヨ

トミヨはオスが水草を丸めて巣を作り、新鮮なお水を送って卵の世話をするので有名な魚ですね。
ムサシトミヨは関東の固有種で、かつては石神井、井の頭、埼玉県熊谷市、本庄市、川越市、茨城県、千葉県に分布していましたが、現在は熊谷市元荒川源流域でしか確認されておらず、熊谷には保護センターもあって、埼玉県の天然記念物、県の魚にも指定されています。

ミヤコタナゴ

国の天然記念物。関東地方での呼び名はまちまちで、栃木での「オシャレブナ」はまだわかるものの、千葉南総の「ミョーブタ・ジョンピー」とかもう。
東京近郊が天然分布域だったため、戦後の高度経済成長で住処がなくなってしまいました。
最近では28匹→1121匹とものすごく繁殖に成功させた男性が文化庁に「増えすぎて困る」と泣きついて無許可で譲り受けたことが発覚、「種の保存法違反」と「文化財保護法違反」で書類送検されて話題になりました。

外来種と在来種の慰霊祭に考える

井の頭公園のかいぼりプロジェクトの一環として、慰霊祭も行われました。
外来種として駆除される生物はもちろん、外来種に捕食されてしまった在来種を弔う意味もあるんだそうです。
両者とも、本来ならば命を落とす必要なんてなかったはずです。
捕獲された外来種の行く末はあまり考えたくないものですが、テレビ番組「池の水ぜんぶ抜く」では時々ミシシッピアカミミガメを引き取ってくれる施設などが登場しますが、それはレアケースで、ほとんどが処分される運命なのでしょう。
それでもただ処分するのではなく、飼料や肥料にしたり、食用にしたり、と経済的にも倫理的にも有効に使おうという流れはありますが、やはり経済的部分でかかるコストが大きすぎるという問題も解決できていませんね。
ただ、モタモタしていると在来種が姿を消してしまいます。

井の頭公園湧水

2018年1月13日(土)、14日(日)9:30~15:30頃、井の頭公園の池ではかいぼり祭が開催され、ボランティアによるお魚レスキューなどの様子が見学できますよ。今後、井の頭公園の池がどのように変化していくのか、楽しみに見守りたいですね!

時代はかいぼりブーム!?

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